スポーツするならスポーツガード

 

楽しく安全にスポーツするために


意外に思うかもしれませんが、スポーツとお口とは結構関わりあっています。

どんな関わりかというと、まず競技中に相手やボールなどにぶつかってのケガがあげられます。

また、しっかり力を入れる必要があるスポーツでは、歯をぐっとくいしばりますよね。

このときに歯がぐらついていたのでは力も入りません。

日本ではまだあまり知られていませんが、マウスガード(スポーツガード)といって、スポーツ中の口のケガを予防したり、しっかりとかみしめることができるように使われるものがあります。
近年、脳震盪の予防にも効果があることがわかってきました。

プロのスポーツ選手はよく使っていますが、一般の選手、あるいは学生さんたちも使って安全にスポーツを楽しんでいただきたいと考え、トピックスでご紹介します。

 



スポーツとお口のケガ

 

スポーツではどの程度の人がお口や歯にケガをするでしょう。

ある調査によれば、お口や顔のケガの原因としては交通事故が一番多く、続いて転倒や転落、そして3番目に多いのがスポーツによるものだそうです。
それも、10代の学生さんが最も多くケガをしているといわれます。

確かに、クラブ活動や体育の時間など、学生さんたちはスポーツを盛んにする年代ですね。
スポーツによるケガというのは、競技を始めて日が浅い場合やたまにしか競技しない選手に多いといわれます。

一流選手やプロの選手では危険を回避できるのに、訓練されていない人はそれを避けられないということでしょう。

 

さて、ケガをしやすいスポーツというと、ラグビーやアメリカンフットボール、ボクシング、格闘技などが思い浮かぶでしょう。

 


このような相手と接触しやすい競技は確かにケガをしやすいのですが、実際には野球やバスケット、サッカーでも口や顔にケガをすることがあります。

特に野球では相手との接触以外に、ボールやバットがぶつかってのケガが多くなります。

地域によっては、アイスホッケーやスキーなどによるケガもあります。

では、どんなケガが多いかというと、一番は上の前歯の打撲、破折、脱臼です。

ひどい場合には歯が抜け落ちたり、顔やアゴの骨を折ったりすることがあります。
          



ケガを予防するマウスガード
 

マウスガード(スポーツガード)はマウスプロテクター、マウスピース、とも呼ばれます。

 

マウスピースといえば、ボクシングやK1選手がお口に入れているものを思い出してピンとくるでしょう。
お口のケガを予防するために使い、通常は上アゴの歯を覆うようなU字型のものです。

衝撃を吸収するために柔らかい素材でできています。

マウスガードをつけていないと試合に出られないスポーツがあります。
  ・ボクシング、キックボクシング、K1
  ・アメリカンフットボール
  ・空手の一部
  ・ラグビーの一部
  ・ラクロス(女子)
  ・インラインホッケー(20歳以下)  などです。

 

義務ではないですが、マウスガードがよく使われるスポーツとしては、バスケットボール、水泳、アイスホッケー、サッカー、柔道、相撲、スキーなどがあります。

綱引きや重量挙げ、射撃の選手も使うことがあります。

 

 



マウスガードを作るには?
 

では、どうしたらマウスガードを手に入れることができるでしょう。

 

簡単なのは、スポーツ用品店で購入することです。

マウスフォムードタイプといって、お湯につけて軟化して口の中にあわせるものが市販されています。
値段は数百円から数千円です。

 

しかし、お湯につけたアツアツのマウスガードでお口を火傷してしまう場合があり危険ですし、形がなかなかぴったりとはいかないのでつけ心地が悪いようです。

もうひとつとしては、歯科医院で作る方法があります。

カスタムメイド(オーダーメイド)タイプといい、歯型とかみ合わせを採ってお口にぴったりのマウスガードを作ります。

この場合はお口に合っているのでつけ心地がよく、危険防止の効果も高いのでお勧めです。

 

値段は数千円から数万円かかります(ちなみに当院では税別8,000円です)。
なお、マウスガードを手に入れたら練習中から使って慣れるようにしましょう。
  

【カスタムメイドのマウスガードの作り方】

それぞれの方の歯型に合わせて作ります。

専用のプレートを歯型に合わせて熱で成型します。

歯の接触を調整します。

ハグキにも痛みがないよう調整研磨します。

良く適合したマウスガードで、最良のパフォーマンスが出せることが目標です。

当院では、色付きの他、透明なマウスガードも取り扱います。




かみ合わせと運動能力の関係は?

 

かみ合わせと運動能力については様々な研究がされています。
でも、スポーツというのは多くの異なった体の動きが要求されるもので、かみ合わせの良し悪しがどのような運動に影響するかはまだはっきりしていません。

ある程度明らかにされているのは、かみ合わせとバランス感覚との関わりです。

 

例えば、年配で総入れ歯の方が入れ歯をはずして噛めなくなると体の重心がふらつき、入れ歯をつけて噛めるようにすると体のふらつきが小さくなって、歯のそろった若者と同じくらいカラダのバランス感覚がよくなるというものです。
 
同じように、アーチェリーやライフル射撃においては、かみ合わせがしっかりしていると頭や体のぶれが少なくなって、標的が狙いやすくなるといわれます。

もうひとつは、マシーンを使った筋力トレーニングなどのときに、しっかりかみしめると筋力が向上する場合があります。

 

少し古い話ですが、野球選手で多くのホームランを打った王貞治さんは、現役時代にぐっとかみしめるバッティングを続けていたため、引退するころには歯がボロボロだったといわれます。

スポーツで極める人は、それくらい歯も頑張っているという証拠ですね。

 

これからも様々な研究からかみ合わせと運動能力との関わりが明らかになることでしょう。

 

 



お口のケガをしてしまったら?
 

スポーツでお口のケガをしてしまったら、いったいどうしましょう?
めったに無いことでしょうが、いざというとき慌てず適切な処置ができるよう、スポーツに関わる方、小さなお子さんをお持ちの方にはぜひ知っておいて欲しいケガのときの対応です。

(1)歯が抜け落ちてしまったら?
スポーツで相手や器具と接触してよく起こるのは、前歯が抜けてしまうケガです。
まずはとにかく抜けた歯を探しましょう。

友だちや周りの人に手伝ってもらい、急いで見つけるのが肝心です。

 

歯は早く対処すれば元の場所に植えなおすことができます。

歯が見つかったら、
  1)歯の根を水道水でこすらずに洗う(30秒以内)
  2)元の位置に戻せるならもどす
  3)無理ならば牛乳につけるか、歯とほっぺたの間や舌の下に入れて、歯医者へ急げ!

歯医者では歯を植えなおして固定します。

早ければ早いほど元どおりにもどる可能性が高くなります。

なお、抜けた歯の根の周りには歯ぐきや歯根膜という組織の一部が付いています。
それは擦り取ったりせずそのままにしてください。

水道水で洗うときにはこすらず、砂などを流す程度にしましょう。


(2)歯が欠けてしまったら
歯が一部欠けてしまったら、まずは欠けた歯を探してください。
見つかったらそれをもって急いで歯医者に!
歯の神経が出ていなければ、接着剤で欠けた部分をつけることができます。

もし神経が出てしまったら、神経にふたをしてから、あるいは神経をとってかわりの薬をつめてからかけたところを治します。

欠けた歯がみつからないときには、歯と同じ色の樹脂(レジン)などで修復できます。

 

なお、歯が欠けたままで放っておくと、ときに神経が感染して炎症をおこし痛みが出たり、歯の根の先に膿みの袋を作ったりすることがあります。
ですから、早めに歯科医院を受診しましょう。

(3)歯がグラグラしていたら
何かにぶつかって歯がグラグラすることを脱臼といいます。
歯が折れていなければ、しばらく両隣の歯などと針金や特殊な接着剤で固定しておくだけで治ります。

 

ただし、歯の根の先のほうで折れたりヒビが入っていることがありますので、歯をぶつけたときにはレントゲン写真で根の先までチェックしてもらいましょう。

(4)歯が変色してきたら
歯をぶつけたけれどそのときにはぐらぐらもぜず、折れていなかったために放置しておき、あとから歯が変色することがあります。
これはぶつけた衝撃で歯の神経が死んでしまい、中で腐った状態になっている証拠です。
この場合は歯の神経を治療してから、歯の漂白をするか歯を少し削ってかぶせ物をするかの処置が必要になります。
一本だけ変色した歯があるときには歯科医院で相談してみましょう。

 

 



終わりに

 

スポーツ中のケガは、実際に起きると慌ててしまいがちです。

 

でも適切な処置さえ心に留めておけば、いざというとききっとお役に立つことでしょう。
また、ケガをできるだけ予防して安全に楽しくスポーツするために、マウスガードを利用しましょう。

 

スポーツ選手も歯が命!

日頃のお口の管理もあわせて行い、自分の力を充分発揮できるように健康なお口を保ちましょうね!


2019年07月01日