からだの健康はお口から


~よく噛み、しゃべり、笑い、そして清潔に~

噛むことと健康

 

昔から「よく噛むと頭が良くなる」、「ボケ防止にはよく噛むことだ」といわれています。

なぜそうなるのかという決定的なデータはまだないようですが、歯を失うとアルツハイマー型の痴ほうの危険因子になるという報告や、固いエサを与えたネズミの方が、粉末のエサを与えたネズミより学習記憶力が高いという報告があります。

脳の大脳皮質では、下図のように唇や舌、下顎など噛むことに関わる部分からの刺激を受け、運動をコントロールする信号を送るといわれています。

図の中で、足や胴体部分に比べて、手と共に非常に大きい部分を占めていることがおわかりになるでしょう。
つまり、よく噛むことが脳に大きな影響を与えると考えられるのです。

(下図はPenfield W, Rasmussen G: The Cerebrel Cortex of Man. Macmillan, 1950による)

 


さて、皆さんご存知のように、日本は世界一の長寿国となりました。

現代はまさに人生100年の時代。

 

ところが、これまでの統計では日本人の歯の平均寿命は約50歳といわれ、80歳をを越えて自分の歯が20本以上ある方は本当にごくわずか、表彰ものなのです(実際、各県の歯科医師会等で表彰されています)。

年を経るにつれ、手足の筋肉は老化して筋力は落ちてきますが、噛むことに関わる筋肉は体のほかの筋肉ほどは衰えません。

これは食べる、噛む、しゃべる、笑うなどのお口の周りの動きが日常的で、不断のトレーニングがなされているのと同じだからだと考えられています。


ところが、自分の歯を失って、入れ歯などで噛めるように補わないと、噛めなくなることによって筋肉は急激に弱くなります。

ですから、歯がない方は自分に合った入れ歯を使いこなすことが大切になります。
 

よく噛んで食べることは、栄養摂取として重要な意味をもつとともに、食品の温度や舌触り、歯ごたえ、味などの様々な感覚を脳に送り刺激します。

さらに、食を楽しむことによって精神面でも喜びや満足を得ることができる、それが食べることの意味なのです。

ゆっくりと味わいながら良くかんで楽しくお食事しましょう。

 




お口は健康の源

 

最近、自分の歯や合った入れ歯でよく噛むことに加えて、お口のケア全般がからだの健康と関わっていることが明らかとなりつつあります。

 

平成15年7月、「歯磨きで痴ほうストップ!東北大、高齢者全国調査へ」というニュースが報告されました(河北新報社)。

 

10年前から、東北大の佐々木英忠教授(老年・呼吸器病態学)は、歯磨きによる脳への刺激で作り出される神経伝達物質「サブスタンスP」に注目し、全国10ヶ所の要介護老人のいる施設で600人を対象にした調査を2年実施しました。

 

その結果、食後に5~10分歯磨きした高齢者では、「サブスタンスP」の効力で肺炎発生率は40%も減少したとのこと。
また、歯磨きしない高齢者は、せき反射機能の低下などで一度肺炎になると80%が死亡したのに対して、歯磨きをした方は死亡率を半減することができたと報告しています。

 

教授らは、歯磨きが痴ほうの進行を抑える効果について、平成15年夏から全国の老人施設で調査を行うことにしたとのこと。

老化の総合的な予防策に役立てる試みだそうです。

要介護高齢者の多くは歯磨きの習慣をやめているといわれますが、お口を清潔に保つための行為(口腔ケア)が脳の刺激になって痴ほうを軽くしてくれる可能性があるとすれば、介護するほうもやりがいがありますよね。

 

どうぞ、お食事をあまりとらない方や歯がない方、入れ歯をお使いでなく流動食の方も、お口のお掃除としてハグキや舌、頬の粘膜などを磨いて清潔にしましょう。

歯のない方には柔らかいスポンジブラシ等がありますので、お口に合った道具を上手に選んでください。
また、刺激するという意味で唇や頬の運動やマッサージも効果的。それらが心とからだ健康につながります!




お口の健康を保つには
 

歯やハグキの病気は、以前は「年を取れば必ず悪くなる老化現象」ととらえられがちでした。

 

ところが、実はむし歯も歯周病も細菌による感染症ですので、お口の中を歯ブラシ等で清潔に保ち、正しいかみあわせを維持しながらしっかりよく噛んで使っていれば、一生自分の歯を保つことは不可能ではありません。

 

とはいえ、自分の磨き方はこれでよいのか、歯やハグキの健康状態に合った適切なお手入れが出来ているかはなかなか判断できないものですよね。

また、自分ではどうしてもうまくお掃除できない苦手な部分というのがあります。

 

そんなときお役に立つために私たち歯科医院があります。

治療するというよりは、お口の健康を保つためのセルフケア(自己管理)をバックアップする、それが「かかりつけ歯科医」です。

 

どうぞ気の合う先生やスタッフのいる病院を見つけて、お気軽にご利用になってください。


2019年07月01日