見た目も大事!

 

きれいな口元で素敵な笑顔を

皆さんはご自分の口元が好きですか?
もし好きでないとしたら、どこがどんな風になったらいいなあと思いますか?

歯科治療では、むし歯で痛んだ歯を治したり、歯のないところに入れ歯を作ることによって食事を噛めるようにする≪機能的な回復≫とともに、口元の美しさを回復する≪審美的な回復、あるいは改善≫も行います。

ところが、美しさについて求めると、

「そこまで必要ない」

「見た目を気にするなんて」

「たいしたことないよ」

と否定的な意見を返される経験を多くの方がもっており、自分は気になるけれどそれをおおっぴらに表現することがはばかられると感じている場合があります。

見た目を改善することは、はたして「たいしたことではない」のでしょうか?

答えは、ノーです!

自分が気にしている限り、見た目の問題は心にとても大きな陰を落とします。


「見た目を気にして何が悪い!」

という大声とともに、私(副院長千春)の経験も交えてお話したいと思います。

 



「先生、私は治療したほうがいいんでしょうか?」

 

見た目について気になっていて、それを身近な家族や友人からは

「気にしすぎ」

「たいしたことない」

「男だからいいんじゃない?」

「(歯の治療は高いから)もったいないよ」

などといわれた方は、自分は気にしているけれど治療する必要のない程度なのか、あるいはやはり治療した方が良いのか専門家の判断を仰ごうと来院されてこう尋ねられます。

「先生、私は治療したほうがいいんでしょうか?」

そんなとき、私たちは
「ご自身が気になるのでしたら治療が必要ですし、そうでなければ治療は必要ありません」
とお答えします。

歯の色や形、並びの問題について、ほとんどの方は今まで必要に応じて工夫しながらお食事したり、おしゃべりしたりしています。

中にはそれが難しい場合もありますが、ほとんどの場合は見た目が気にならないのなら今のままで何ら生活に支障ないのです。

 

自分の個性の一つと受け止めて、気持ちの上で「OK」といえるなら大丈夫。

ところが、ほんの少しでこぼこした並びであったり、ちょっとだけ隙間が開いている、あるいは歯の色が黄色っぽいなど、その程度の大小に関わらずご本人が気になるのでしたらそれは治療の対象となり、改善する手立てをご紹介します。

現在の日本の健康保険制度では、「病気」と診断されたものについては保険が利いて、それ以外の審美的な問題は「病気」ではないので保険が利かないきまりとなっています。

 

でも、私たちは見た目の問題が「心の病気」を引き起こすことを知っています。

 

病気とまではいかなくても、少なくとも心の元気を奪うことは間違いありません。
ご自分が気になるのなら、それはあきらかに治療の対象と考えてよいのです。

 



見た目が気になることが恥ずかしい

 

日本には「恥じ」の文化があるといわれます。

そしてその「恥じ」を「隠す」文化もあります。

私はまだ乳母車に乗っているころ乳歯の前歯を強く打ったことが原因で、永久歯の前歯1本に茶褐色の色がついていました。

自分ではとても気になり、歯科医師である父に治して欲しいと頼みましたが、まだ幼いうちはハグキの形が変わるから大学生になってからだ、それまで気にするなといわれました。

大人になったらきれいにしてもらえる、という先の見通しは立ったものの、やはり歯の色は気になります。

 

いつしか笑う時に必ず手で口元を隠す癖がつきました。

誰と話しても思い切り笑うことをためらいながら、でも笑ってしまった時は隠さなくてはという反応でした。

 

恥ずかしい私の歯…。

ずっとそんな思いで中学、高校生活を過ごしたように思います。

そしてついに大学生になり、夏休みに早速歯を削って治療してもらいました。
もう隣の歯と比べても遜色ない、白く輝く歯!

しばらくは笑う時に無意識に手が口元を隠していましたが、

「もうそんな必要ないんだ!」

と隠すことをやめて、気持ちはパアッと明るく開けたような感覚。

 

大きく口を開けて笑って大丈夫!

そこで芽生えたのは自分に対する安心、自信です。

今考えれば、私は歯の色が気になることを父に相談したきりで、他のひとには一切話しませんでした。

自分の心の中だけで気にし続けていたのです。


それを見た他人がどう思うかは、

「きっとおかしいと思っているに違いない」

「ヘンな歯だなと気になっていても、決して本人には言わないに違いない」

と推測しているだけで、恥ずかしくて恐くて確認できませんでした。
 
歯科医院にはそんな悩みをもつ患者さんがたくさんおみえになります。

 

例えば、当院を受診した矯正希望のある男性患者さんに

「どこが気になりますか?」

とお尋ねしたところ、歯並びが悪いと食事が噛みにくい・発音しにくい・歯みがきしにくいなどとおっしゃり、見た目のことが出てきませんでした。

 

「他に気になることはありませんか?」

と尋ねても、ご本人はうーんと首をかしげて考えている様子。

 

「矯正治療では口元の見た目も変えることができます。変えるとしたらどんな風になりたいと思います?」

ときかれて、やっとハッとしたように

「この前歯を…」

とお話くださることがありました。

見た目のことを気にしていること自体が恥ずかしい、見た目のために治療するんではないのだ、という気持ちがあるのかもしれません。

 

ところが、本当に変えたいのは見た目だけだったりするものです。

見た目を変えて、自信を持って笑顔で笑いたい、という期待が本当は隠れていませんか?

見た目を気にすることは決して恥ずかしいことでも惨めなことでもないことを、ぜひ知って欲しいと思います。

 



口を開けて笑いたい!

 

口を開けて笑う、特に歯を見せて笑うというのは、他人に自分をさらけ出すのと同じ意味を持ちます。

 

ですから、歯を見せずに笑う人より、歯を思い切り出して笑う人のほうがより親近感を持たれます。

たとえばモナリザが歯をちょっとでも見せて笑っていたら、とたんに親近感はアップすることでしょう(神秘性はがた落ちですが)。

お口は内臓に続く扉で、口を開けるというのは解剖学的にもまさしく自分の中身をさらけ出していることになります。
口を開けて笑うことは自分を出している、心を許している、と受け止められるので、相手とのコミュニケーションがより深まりやすいのです。

ところが、歯に何らかのコンプレックスをもっていると、どうしても思い切り口を開けて笑うことができません。
私がそうだったように口元を手で隠したり、全く口を開けずに笑う、ひどい場合は笑うことすらためらうこともあります。

できれば他人と話したくないという消極的な気持ちになっているので、自分をアピールしたり、本当の意味で相手と打ち解けることが難しくなる場合があります。

 

例えばセールスマンでは、最初から売り込みのパワーが半減しているようなもの。

自分に自信がもてないし、相手も自分に対して簡単には心を許してくれない状況を、その笑顔一つで作ってしまうのです。

笑顔にはエネルギーがあります。

 

お口の現状を自分の個性として認めるか、治療によって満足いくものに改善することで心置きなく笑えるようになって、気持ちが元気になって欲しいと考えます。

この人は私と打ち解けて、一緒に楽しんでいる、と感じる笑顔はどっち?

 



最後に

 

見た目について気になることが心の元気を奪う存在であれば、ぜひ歯科治療で改善していただきたいと思います。

ただし、逆に心が元気でないことが原因で見た目が気になる場合があります。

例えば、自分は幸せではない、それは歯が大きすぎるからだ、と考えて歯の形を変えてみる。
それでも私は幸せに思えない。

それはこの歯が黄色いからだ、などと一つ改善しても次々に気になることが現れてしまう…。

 

それは見た目が問題ではなく、自分自信を認めることができない心、自分以外の人に認められていないと思う不安な心に問題が隠れていることがあります。

何度治療しても満足いかないと感じたら、治療をさらに続ける前に自分の心に向き合うことが必要かもしれません。

そのときは、カウンセリングで心の扉を叩いてみてください。


2019年07月01日