皆さんは「キシリトール」という名前を一度は目にしたり、耳にしたりしたことがあるでしょう。
最近は「歯にいい甘味料」として定着し、様々な食品やハミガキ剤等に使用されています。
でも、実際にどんなふうにいいのか、ご存知の方はそういらっしゃらないようです。
そこで、今回のトピックスではキシリトールについて詳しく掲載することにしました。
これを読んだらキシリトールを摂らずにはいられないかも!?
キシリトールって何?
キシリトールはベリー類やプラム、カリフラワー、あるいは白樺や樫などの広葉樹などに多く含まれる甘味炭水化物です。
すべての糖アルコールの中で最も甘く、砂糖と同じ程度の甘味度があるにもかかわらず、砂糖の75%のカロリー!という特徴を持っています。
キシリトールはFAO(世界食料農業機関)/WHO(世界保健機関)合同の規格委員会より、「1日の許容摂取量を限定せず」という最も安全性の高いカテゴリーとして評価されている食品添加物です。
医療の現場では、キシリトールはインシュリンに影響を与えないため、糖分の摂取をコントロールする必要がある糖尿病の患者さんの点滴にも以前から使われていました。
まれに、過剰摂取(1日にキシリトール量20~30g以上)で下痢が起こりやすくなることがあります(便秘がちな女性では喜ぶ方もいるようですが)。
この場合は量を減らすか、摂取を一時中止したほうがよいでしょう。
キシリトールの効果は?
キシリトールはむし歯予防に効果的といわれますが、その理由は大きく2つに分かれます。
ひとつはむし歯の原因となるミュータンス菌に直接アタックする効果、もう一つは唾液分泌を増やすことによる効果です。
①ミュータンス菌にアタック!
むし歯とは、ミュータンス菌に代表されるむし歯の原因菌が酸を産生し、歯が溶け出す現象です。
菌は糖分などの栄養を分解して酸を作り出しますが、キシリトールでは酸が作られません。
しかも、ミュータンス菌の体内に取り込まれると、菌自体が持っているエネルギーを放出させてしまうので、力が弱って次第に菌の数が減っていくことになります。
キシリトールを長期間(1日3回で3ヶ月)継続して摂ると、プラーク(歯垢)をすみかとするむし歯菌は数が減って元気がなくなり、同時にプラークが歯面からはがれやすくなることも知られています。
この効果は他の糖アルコールには見られない、キシリトール特有の作用です。
むし歯菌は糖分などを分解して酸を作り、歯を溶かします。
ところが、キシリトールを摂取すると…
菌たちは酸を作らないだけでなく、キシリトールを取り込んだで元気がなくなります!
②唾液が増えてラッキー!
キシリトールはその清涼感のある甘さにより唾液を出させる効果があります。
唾液の量が増えるということは、お口の中をきれいに洗い流してくれるだけでなく、唾液に含まれる様々な成分によって歯の成熟作用や石灰化作用が促進されるといわれます。
中でもキシリトール配合のガムでは噛むことによって唾液分泌の効果がより高まります。
近年、唾液は人が本来持っている病気から身を守る自己防御機構の重要な要素として注目されています。
むし歯に限らず、健康を保つために役立つ唾液を十分に出すためにも、キシリトールを活用することができるのです。
むし歯予防に効果的なキシリトールの使い方
むし歯予防効果を期待したキシリトールの基本的な摂り方は、次のように考えられています。
1)食品中のショ糖すべてをキシリトールに変える必要はなく、従来からの食事のままで、食後(1日3回)キシリトール含有ガムを摂取する。(キシリトールを食生活の中に追加する)
2)歯を磨く、フッ化物を適切に利用する、規則正しい食生活を送る、定期的に歯科医院を受診するなどを実行したうえで、キシリトール含有ガムを定期的に摂る。
3)むし歯リスクの高い方では、100%キシリトール配合のガムを毎食後と間食後、寝る前の計5回摂るようにする(1回に粒ガム2個摂るとよい)。
夜寝る前のガム噛みは、「寝る前には歯を磨き、その後は何も食べないこと!」指導されてきた私たちにとってはちょっと抵抗がありますが、むし歯予防の先進国といわれるフィンランドではキシリトールを積極的に利用しているそうです。
上手なキシリトール製品の選び方
キシリトールが配合された製品は数多くありますが、むし歯予防効果が期待できる菓子はガムか錠菓(アメ、タブレット)に限られます。
また、できるだけキシリトールが高濃度(50%以上)に入っていることが大切です。
キシリトールガムなどはパッケージがどれも似ています。
製品を選ぶ時には、必ずその表示をよく見ましょう。
あるいは栄養成分表示で糖質とキシリトールの割合を確認しましょう。
★キシリトール50%以上の表示があること!
上はキシリトール100%配合ガム(歯科医院専売)
表示は下のように記載されています。
糖質が16.9gでも、糖類0gなら大丈夫!
★シュガーレスの表示があること!
この表示があれば、キシリトール以外の成分も砂糖などの発酵性材料(むし歯の原因となる)が含まれていないことになります。
★ガムか錠菓であること!
ソフトキャンディや飲料水ではむし歯予防効果は期待できません。
キシリトール Q&A
1.キシリトールは食品添加物とされていますが、人工甘味料なのですか?
⇒キシリトールはベリー類や野菜などに含まれる天然の甘味料です。
しかし、ガムやタブレットの甘味料として用いられるのは、白樺や樫の木に含まれる成分を加工して作り出したキシリトールです。
つまり、キシリトール製品として配合されるものは、完全に合成して作られたものではなく、天然の素材に手を加えて作った甘味料といえます。
2.キシリトールの効果的な使い方は?
⇒むし歯を効果的に予防するには、上述のように高濃度のキシリトール配合ガムか錠菓を、できるだけ長く口の中に入れておくことです。
ガムでいえば、1回に5分程度は噛みましょう。
1日3回以上摂取し、これを3週間継続すると口腔環境改善の効果が現れてくるといわれます。
タブレットでは、噛まずにゆっくり溶かして唾液をお口の中全体にいきわたらせることがポイントです。
食後がベストですが、食間でもかまいません。
ただし、あくまでもハミガキや規則正しい食生活、定期的な歯科検診などは忘れずに!
3.キシリトールの効果は、どのくらいから現れますか?
⇒1日3回100%キシリトールガムを噛んでプラーク(歯垢)が減るのは1~2週間です。
さらに3ヶ月続けて摂ると、むし歯になりにくい状況になるといわれます。
効果が現れると、「歯がツルツルしてきた」「さっぱりした」「口の中がベタベタたしない」といった感想がきかれるようです。
4.小児や妊婦、高齢者でもキシリトールを摂っていいですか?
⇒キシリトールは安全性の高いカテゴリーとして評価されている食品添加物ですので、常識的な摂取量でしたら問題ありません。
ただし、ガムやタブレットとして摂りますので、その形状がお使いになる方に適しているか、安全かをよく考えてお使いください。
例えば、お子さまではガムを飲み込まずに噛むことができる年齢か、あるいは高齢者では誤嚥する心配はないかなどを考慮してお使いください。
ちなみに、むし歯菌(ミュータンス菌)は乳児の母親からの口移しなどでうつる(母子感染)と考えられています。
できるだけお子さまにむし歯を作らないために、妊婦の方は日頃から自分のお口のミュータンス菌を減らして感染を防ぐためにキシリトールをぜひご活用ください。
終わりに
ここ数年、お菓子業界は伸び悩みを続ける中、ガムは右肩上がりで販売数を伸ばしていると聞きます。これはキシリトール配合ガムのシェア拡大によるところが大きいととのこと。
当院でもキシリトール100%ガムを扱っていますが、繰り返しご注文頂くことの多い人気商品となっています。
歯にいい食品として皆さんの生活の中に定着しつつあるキシリトール製品、ぜひこの効果を知ったうえで適切に活用していただきたいと考えます。