前回のトピックスでは、歯科医院で働くスタッフがどんな働きをしているかを取り上げました。
(「あなたも歯科医院で働いてみる?」)
お読みになった方は、「ただ診療チェアーの横に立って微笑んでいるだけではないんだ」とわかっていただけたでしょう。
今回は、当院で実際に働くスタッフ三名(いずれも歯科衛生士:Dental Hygienist)に、その仕事の楽しみと苦しみを聞いてみました。
もちろん、残業が長い、給料が安い、院長が物を散らかして片付けないとか…勤務上いろいろな苦しみは挙げたらきりがないでしょうが、そこは今回できるだけ目をつぶってもらい、衛生士として患者さんに関わる上での楽しみと苦しみを中心に回答してもらっています。
当院の衛生士は年齢も経験も異なり、まさに三者三様!それぞれが今感じていることを、シンプルにまとめてもらいました。
歯科衛生士を目指す方にはぜひご覧いただきたいと思います。
衛生士 I さん(衛生士歴10数年のベテラン)
【衛生士(以下DH)になって楽しかたこと、よかったこと】
よかったことは手に職をもてたこと、そしてDHの仕事が自分に合っていたことです。
それが楽しい毎日を送れることにつながっていると思います。
DHになってうれしかったことは、患者さんから「Iさんがいてよかった」、「歯石とり、気持ちよくて寝てしまった」、「歯医者に行くのが楽しみになった」とおっしゃっていただいた時です。
また、87歳のおじいちゃまから「うちの島に嫁にこんね(こないかね)?」とくどかれた(?)こともうれしかったです。
【DHになって苦しかったこと、つらかったこと】
1)立ち仕事が多くて足がむくむ!
2)細かい仕事が多いので目が疲れる!
3)指に傷をつけないように日ごろからかなり気を使う!
4)スタッフの数が少ないため、体調を崩しても休めない!
ということが苦しみ、つらさでしょうか。
また、お口の健康の大切さを自分なりに一生懸命説明しても、それが患者さんに伝わっていなかったときは、自分の能力の足りなさを痛感して落ち込む事があります…。
【DHを目指す方にひとこと!】
DHは、まだまだ世間一般に知られていない職業だと思います。
この私も「歯医者のお姉さん」というイメージでこの仕事につきましたが、実際に働くうちに、病気を治すというより予防することが大切で、その役目を担うのがDHだと理解するようになりました。
自分次第でやりがいのある職業になります!
そして、怖~いイメージの歯医者で、癒しの花となりましょう!
衛生士 Sさん(衛生士歴10数年、大学病院でも勤務し、育児休職経験ありの三児の母)
【衛生士になって楽しかたこと、よかったこと】
決して華やかではない地味~な仕事ですが、「とても気持ちよかった」、「歯って大事よね、私に合うハブラシはどれ?」などと患者さんから声をかけていただいたとき、よかったぁと思います。
【DHになって苦しかったこと、つらかったこと】
私自身の人間性あるいは技術の未熟さゆえ、患者さんとうまくコミュニケーションがとれないときは苦しいです!
【DHを目指す方にひとこと!】
子育てが一段落ついて再就職しようと決意した時、迷わずDHに復帰する事を選びました。
それは、以前勤務していた頃の自分とは違い、子育てを体験した母親としての立場でいろんなお母さま方のお手伝いができればいいなと考えたからです。
DHであると同時に、それぞれの人がいろいろな経験を積み重ねていく事と思います。それが仕事に活かせるところがDHの魅力です!
衛生士 Oさん(衛生士歴数ヶ月、ピチピチの新人!)
【衛生士になって楽しかたこと、よかったこと】
DHになってまだ数ヶ月ですが、一番うれしいことはDHになれたこと!です。
なれたお陰でおかもと歯科医院の先生方、スタッフの方々にもお会いする事ができたのですから…。
私は子どもが大好きです。
診療中に患者さんのお子さんと過ごす時間があり、前回来院したときより成長している姿をみるとほのぼのとした幸せな気分になります。
私自身も日一日と成長していけたらいいなあと思います!
【DHになって苦しかったこと、つらかったこと】
なんにしても、できない!ことが苦しいです。
一度教えていただいたのに失敗しては落ち込み…。
何度挑戦しても納得いく答えが出せない時があります。
自分の不甲斐なさと、教えてくださる方への申し訳なさで涙が出ることもありますが、先生方や先輩方に支えられてなんとか毎日踏ん張っています!
【DHを目指す方にひとこと!】
これからDHになろうとする皆さん、自分が目指すDH像を持っているでしょうか?
どんなDHになりたいのか、どうしたらそれに近づけるのか、そしてそんなDHになった未来の自分を想像するとワクワク・ドキドキしてきませんか?
目指すDHに一歩でも早くなれるように…一緒にがんばりましょう!
終わりに
三者三様のコメント、いかがでしたでしょうか。
衛生士と一口に言っても、仕事への情熱や経験によってそれぞれの個性がしっかり出てきます。
長く勤めるほど、多くの患者さんと関わるほど、味のある衛生士になっていくと思います。
このトピックスをまとめる少し前に、当院のスタッフと他の三つの医院の衛生士さん数名が集まって、研修会を行いました。
これは院長がお膳立てしたわけではなく、「みんなはどうやっているの?」という疑問から自然発生的に開催することになった会でした。
毎日の診療の場で自分なりにがんばっているけれど、他に何かいい手はないか、アイディアはないかと模索している姿がとても素敵でした。
(写真はそれぞれが自分のやり方を発表して、それを興味深々で覗き込んでいるところです)
こういった会はたった一回で終わるかもしれませんし、また誰かが思い立って違うテーマで計画されるかもしれません。
それぞれの医院で夜遅くまで働いたり、家庭を守ったりしている衛生士さんですから、負担にならない範囲でできればいいのではと考えます。
今まで知り得た様々な情報と経験から自分たちで考える、そんな力強さが頼もしい!
仕事を楽しむ人ほど、「このときはどうしたらいいんだろう?」とさらに上を見て歩んでいくもの。
そんな衛生士さんたちがまわりにたくさんいるものだなあと感心した一日でした。
そして、一度衛生士になったら、途中で休みながらでもぜひ長く楽しく続けて欲しいと願っています。